2019年7月14日日曜日

女子短距離陣も少しだけ光 日本選手権5位内に3人の高校生

 サニブラウン、桐生の9秒台スプリンター2人をかかえ東京五輪400リレーで金メダルの期待さえ高まっている男子に比べ、女子短距離界はまったく元気がない。長年、牽引してきた福島千里は30歳を超え、故障続きで精彩を欠いている。2017年の日本選手権100で福島の8連覇を阻止した市川華菜も勢いは続かず。若いメンバーで挑んだ横浜での世界リレーも実力不足のよる予選落ち。男女のこの落差は何だろうと思っていたところ、少しだけ、明るい光が見えてきた。

 福岡市の博多の森競技場で開かれた今年の日本陸上選手権。サニブラウン、桐生の9秒台対決が期待され、NHKが総合テレビで中継するほど注目を集めたが、その直前に行われた女子100も将来を期待させる熱戦だった。


御家瀬緑、29年ぶり高校生女王


 決勝は北海道出身で福島の後継者と期待される高校3年生の御家瀬緑が好スタートで高校生として29年ぶりに制覇した。昨年、高校総体で優勝し、アジア大会のリレーメンバーにも選ばれる期待の選手だが,順調に成長してきた。


復活土井杏南


 2位には23歳の土井杏南だ。中学生の時から大きな注目を集め、2012年のロンドン五輪に高校2年生で400リレーに参加。福島に次ぐ存在として、期待は大きかった。しかし、その後は全く鳴かず飛ばず。故障も続いたようで昨年の日本選手権は出場資格さえなかったという。
 ところが、今年に入りようやく復活してきた。少女の体から欧米のスプリンターを思わせるしっかりした力強いボディに変わり、身長が160センチもない小柄のランナーだが、走りもたくましくなっていた。準決勝では御家瀬緑をぶっちぎる走りっぷりで11秒60。まだタイムは伸ばせそうだ。


3位に高2青山華依


 3位に入った青山華依は高校2年16歳。中学時代はそれほど目立った存在ではなかったが高校入学後、一気に目立つ存在に浮上してきた。まだ細身の少女だが、さらに成長が期待できる。きちんと育ててあげたいと思う。

急成長の三浦由奈は5位


 もう1人は予選、準決勝と走るたびに自己記録を更新した三浦由奈。御家瀬同様の高校3年生のスプリンターだが、準決勝では11秒60の自己最高をマーク、2位以下を引き離した。2008年、あれよあれよという間に日本選手権を制し、北京五輪で女子100としてはヘルシンキ大会以来52年ぶりに代表に選ばれた福島を思い起こす走りっぷりだ。決勝では出遅れて硬くなったのか5位。

 5位以内に3人の高校生。また8位の高校3年生石堂陽奈は日本陸上の後の南部記念で土井を破った。今年の高校総体はかなりの見物だろう。


リレー43秒台なら五輪決勝も


 ところで、女子4×100リレーの日本記録は北風沙織、高橋萌木子、福島千里、市川華菜の4人が8年前の2011年にマークした43秒39だ。このタイムは決して悪くはない。リオ五輪の決勝は7,8位が43秒台。横浜の世界リレーは、一線級ではなかったとはいえ優勝の米国が43秒27、日本記録を出せば3位に入れた。

バトン超一流でメダル取った


 個々のタイムは遅くてもバトンリレーが超一流になれば、メダルが取れることは北京五輪の男子4×100リレーで証明済みだ。あのときの4人のタイムは、現在の短距離陣に比べればかなり劣っている。女子の日本記録メンバー持ちタイムは福島の11秒21(日本記録)が筆頭だが残り3人は11秒50ぐらい。御家瀬、土井、青山、三浦らが持ちタイムを少しあげ、バトン技術を向上させれば日本記録を上回れる。東京五輪の決勝進出は夢ではないのだ。

順調な成長期待


 ただ、心配なのはこうした若いスプリンターがとても壊れやすいことだろう。土井のスランプは5、6年も続いた。かつて高校時代に日本選手権で福島を追い詰めた齋藤愛美は現在大学生だが、決勝にも残れなかった。瞬発力が必要な短距離の場合、20歳過ぎたからといって年齢によって衰えることは考えにくく、高校、大学、社会人と年齢があがるにつれ、記録が伸びてもおかしくない。

女子も見たい


 五輪、世界選手権女子100で10代の選手を見ることはまずない。日本でも15年連続で日本選手権決勝進出の32歳和田麻希のような選手もいる。つまり練習できる環境が一番の問題なのだ。東京五輪まであと1年。彼女ら若いスプリンターがさらに成長し、男子同様、リレー決勝で世界に挑む姿が見たい。

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