そこで珍しい掲示を見かけた。最後のスペースが「これより先、写真撮影可能」と記されていたことだった。美術館や博物館といえば、カメラに×マークがついた掲示が当たり前。中には著作権とは全く無縁な古い建物の内部でも撮影禁止のところがあるし、聞いても明確な答えがない施設が掃いて捨てるほどある。そんな中で「撮影可能」とはどうして?と聞いてみた。
「売り」の作品、撮影可能
展示会場にいた女性は「日本の受け入れ側とコレクション側の学芸員が話し合って、撮影可能な絵画を選び、それをこのスペースに集めました」と話した。実はもう一つ不思議なことがあった。展覧会の無料チラシ(見開き)には10枚ほどの絵画が載っているのだが、うち4枚は撮影可能スペースに展示されていた。
ちなみに以下の、ウジェーヌ・ブーダン《トゥルーヴィルの海岸の皇后ウジェニー》、ギュスターヴ・クールベ《マドモワゼル・オーブ・ドゥ・ラ・オルド》、アンリ・ル・シダネル《月明かりの入り江》、ウジェーヌ・ブータン「波止場」の計4枚。チラシに載せるぐらいだから、今回の「売り」の作品とも思われるのだけど、わざわざ撮影可能に選んでいた。
《トゥルーヴィルの海岸の皇后ウジェニー》 |
ギュスターヴ・クールベ《マドモワゼル・オーブ・ドゥ・ラ・オルド》 |
収蔵物を見せる方向に
勝手な推測だが、ようやく日本も美術館博物館が収蔵物を隠すことから、見せる方向に変わってきたのではないか。どこかで読んだのだが、世界的に見ると、絵画を中心に収蔵品をホームページでどんどん公開し、ダウンロードもできるようになっているらしい。
かつて、どんな収蔵品があるのか、常設展示はどんな絵画が見られるのか、あらかじめ見ることはとても難しく、「会場に入ってのお楽しみ」だったが、今は絵画を広く公開することによって見に来てもらおうというのが流れらしい。
美術品は公開するためにある
確かにダヴィンチのように何百年も前の作品なら、著作権もなく、国民の資産として見せるのは当たり前のことだろう。現在のようにネットで簡単に公開できるなら、それにこしたことはない。
収蔵品が貴重な財産であるかのようにほとんど情報を出さない美術館もあるが、美術品は公開するためにあるもので、物理的に傷つくことがないネット上なら何の問題もないはず。さらに絵を傷めるストロボの不使用が守れるなら、会場での撮影もOKだろう。
もちろん、フェルメール展のように人がごった返す展覧会で撮らせるべきだなどというばかげたことは言わないけど。
印象派の作品はあまり多くない
もっとも最大の売り物と思われるドガの「リハーサル」マネの「シャンパングラスのバラ」、セザンヌ、コロー、ルノワール、ゴッホらは対象外。まあ、ここら当たりが限界なのかもしれない。
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