専守防衛、会場警備行動、防衛出動など、日本特有の制度の中で、現場の自衛隊員や政治家が葛藤する姿を描いた映画だった。簡単に言えば、「向こうが撃ってくるまで撃つな」っていうのは、こういう感じなのかな。もっとも、そういう場面って、現実にはあり得ないだろうけど。なんて言いつつ、結構、面白かった。
「大事なのは金儲け」トランプ
自衛隊の「かが」と「いずも」は日本が戦後初めて持つ空母。空母機動部隊と艦載機による真珠湾攻撃という当時、画期的な作戦を考え出した国が、空母のような攻撃兵器を保持することは、、それなりの歴史的な意味がありそうだと思って、かが船上で演説するトランプを見ていた。だけど、日本がF35を100機以上買ってくれた、って銭儲けの話。この男に、意味などを考える頭はなさそうだ。
横須賀基地に停泊中のかが |
以下ネタバレです。
めちゃくちゃでんがな
そこで「空母いぶき」だ。フィリピン北東部に出現した東亜連邦なる国家が、台湾に近い日本の領土である波照間諸島の初島(仮想みたい)を武装した漁船で占拠。海上保安庁の巡視船を拿捕した上、取り返しに向かった空母いぶき以下の部隊に対して、空母機動部隊で対抗するなど、かなりめちゃくちゃなことをやってくる。
なぜか撃ち返さない
その上、自衛隊の偵察機2機を撃墜。空母から発進したミグ戦闘機が対艦ミサイルを発射したり、潜水艦が魚雷を撃ったり、と戦争状態になる。これに対し、自衛隊側はミサイルや魚雷を破壊することに終始。敵の戦闘機部隊に対しては、いぶきから戦闘機を発進させ4機を撃ち落とすものの、空母やほかの艦船、潜水艦への攻撃はなし。艦船を撃沈したら2隻で600人も死ぬから、ミサイルは撃たないなんて会話が交わされる始末。
敵はミサイルや弾じゃない
だが、よーく考えてみるとこりゃ変だ。戦闘機も空母も艦船も潜水艦も、みんな日本の艦船をめがけて撃ってきた。ミサイルは撃ち落とすのは当然としても、撃った本体を攻撃するのは誰が考えても正当防衛。ピストルの弾は悪いが撃った本人は悪くないって理屈はあり得ない。
映画では日本のハイテク防衛兵器が、ほとんどの攻撃を防いだが、たとえ専守防衛の日本であっても、対艦ミサイルと魚雷を撃ちまくり、沈めるしかないだろう。2001年の北朝鮮の工作船事件では、巡視船は機銃掃射で先に撃ってきた不審船を沈めた。北朝鮮はこれに対して、何も言ってこなかった記憶がある。
国連動く
最終決戦か迫ってくるが、国連が動いて仲裁に入り、戦闘は終結。初島占拠も終わる。これもまたちょっと考えにくいが、まあ、そうでもしないと話が終わらないか。
なぜ援軍送らない?
もう一つ疑問はなぜ応援部隊を送らないのか。魚雷攻撃などで映画の後半に空母1、護衛艦2の減っている。艦載機も敵が60機(アメリカの空母かよ)に対し15機。こんな部隊を相手にするとき、たとえ専守防衛だとしても、撃ってきた瞬間、巡航ミサイルや本土、沖縄からの航空機攻撃で殲滅するしかないだろう。全艦艇がやられてもおかしくないのだから。
外国人に理解不可能
原作となる漫画では、相手は中国。占拠されるのは尖閣みたいだが、映画ではさすがに中国にはせず、別の国を造った。海外での商売を考えたのかもしれないが、そもそもこの映画、外国人に理解させるのは無理だ。警備行動、防衛出動に、専守防衛-たぶん、日本以外で理解できる人はいないだろうし、この映画を見てもそんなに攻撃が制約されているなら「降伏するしかないじゃん」というのが、一番、まともな反応だろうから。
ネットで見ていると、軍事オタクさんと思われる人からこっぴどく酷評されていた。別にリアルを追求したわけでもないだろうし、別に大した話じゃないよーな。問題はそっちじゃないでしょう。