2018年7月11日水曜日

暴力とエロス 映画芸術1975年のベスト10

 映画芸術という雑誌がある。現在も発行され、毎年、映画の年間ベスト10、ワースト10を発表しているようだが、1980年ごろには休刊し,その後再刊されたようだ。70年代半ば、そんな映画芸術を購入しており、ベスト10特集号だけはなぜか保存していた。1976年12~1月新年特別号を久々にめくってみた。


グラビアは洋画ポルノ10 3位にディープスロート


 単純にベスト10かと思ったら、巻頭から続くグラビアはなんと洋画ポルノベスト10。1位、巨大なる男とジュステーヌ 2位、ナチ収容所・悪魔の生体実験、と全く知らない作品が続く。3位に登場するのが、あの有名な「ディープスロートミスジョンズの背徳」だ。
 続いて、なぜか当時ロマンポルノが人気を集めた日活の興収ベスト10が並ぶ。1位は東京エマニュエル夫人、2位は続女の4畳半。


日本映画 2位は実録・阿部定


 本誌でようやく日本映画、外国映画のベスト10発表だ。
 日本映画は1位、新幹線大爆破 2位、実録・阿部定 3位県警対組織暴力。ワーストは青春の門 同胞、金環蝕の順番だ。
 男女の猟奇事件である阿部定をテーマにした作品、仁義なき戦いをヒットさせた深作欣二のやくざ映画。かなり偏った選者のベスト10とはいえ、エロと暴力は好まれていた。1975年、記憶をたぐり寄せても何も出てこないが、ベトナム戦争が米国の敗北で終結した年だったかな。

ペキンパーのバイオレンス映画 外国1位


 外国映画は1位、ガルシアの首、2位、愛の嵐 3位ルシアンの青春。ワーストはタワーリングインフェルノ、チャイナタウン、ディープスロート。ガルシアの首はバイオレンス映画の巨匠、サム・ペキンパーの作品。ほとんど頭から消えているが,たぶん、銃弾が飛び交う映画だったのだろう。愛の嵐はナチ収容所の過去を描いた作品。シャーロット・ランブリングが妙に怖い女を演じていたような記憶がある。どちらにしても,エロと暴力だ。

ルーカスもスピルバーグもいなかった


 考えてみると、あのころの映画って、ホントに血しぶきと女性のヌードが多かった。ポルノが解禁されるなどの流れがあったためかもしれないが、それにしてもごく市井の人々を描く映画が少ないし,評価されないような気がした。スターウォーズやジョーズなどその後世界の映画界を席巻するジョージ・ルーカスやスティーブン・スピルバーグが登場する直前であり、ダイナミックな作品もまだ登場していなかった。
 もっともルーカスやスピルバーグは多くが大人から子供まで楽しめる作品を作った。その点、映画芸術ベスト10は大人、それも男が好きな作品が並んでいる。映画を見るという行為は、まだそういう時代だったのだろう。

 ちなみに2017年のベスト1はキネマ旬報と同じ「夜空はいつでも最高密度の青色だ」。ふつーになっちゃかな映画芸術。

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