追っかけはいつものパターン
簡単にストーリーを紹介。「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」というゴーーギャンの絵の題材にもなっている有名な命題。その謎を解き明かしたという天才コンピューター学者が発表直前に殺害される。いつもの主人公、ロバート・ラングトンがスペイン王子の婚約者の美人博物館長とともに「世紀の発見」データを探し求めて奮闘する。おなじみのストーリー展開ではある。
宗教がまだまだ力を持っているスペインが舞台。教科書で人類の誕生が天地創造の世界になっている地域はいまだ多いみたいだが(存在自体に驚き)、そうした宗教と現実のせめぎ合いを背景に、発表を亡きものにしようとする謎の暗殺者と対決していく。
AIはまるで全能の神様
で、全般的な感想を言うと、なーんかこれまでの作品に比べつまんないのだ。発売間もないのでネタバレは避けたいが、やっぱりAIが登場して何かをやっちゃうなんてストーリーは万能の神様が出てくるようなものなので、どこか面白みに欠ける。上下巻だが、下巻早々に犯人がほぼ分かってしまうというのも、ちょっと寂しい。
マドリード、バルセロナどこか縁遠い
ただ、それよりも、スペインという舞台にあまり魅力がない。一度も行ったことがないため、想像力が働かない。マドリード言う町にほとんどイメージがわかず、バルセロナもやたらガウディばかりが出てきてしまう。たぶん、ダン・ブラウンはガウディが好きなんだろう。現存ずるスペイン王室の人々を実際に登場させてしまい、フランコなどという近現代史の人物の影響を描かざるを得ないために、スペインの歴史みたいなものがダイナミックに展開できなくなっているように見えた。
「ダ・ヴィンチ・コード」のフランス、「天使と悪魔」のバチカン、「インフェルノ」のシエナ、ヴェニス。ラングトンが逃げ回る(たいてい逃げてる)コースそれぞれが観光コースのようなもので、一度は行ってみたい感が強かった。
それに比べ「オリジン」は登場する場所にどこか、観光とはほど遠い感じが強い。もちろんスペイン王宮にはそう易々とは入れないだろうし。
キリスト教とは無縁な人々には
もうひとつは天才コンピューター学者が解き明かした謎。おそらく大半の日本人、いや中国韓国などアジア人から見れば「なーに大げさに書いてるの?」「まだそんなことを言ってるの?」レベルの話でストーリーの柱の1つに置くにはどこか無理がある。やっぱりコンピューターとかAI、ロボットなんて話は推理小説に不要だわ。
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