発掘中、単なる空き地
恵美須ケ鼻造船所跡は萩市中心部から数キロ東にある。漁港の中を通り抜けていくと、まるで石垣のような石積みの防波堤が見える。上がってみると、見えるのは海だけ。ふと目を陸側に向けると、テープで区切られ、遺跡を発掘中のような光景が見えた。そばには小さな小屋。「もしかしてここ?」と思ったら、やっぱりそこだった。とにかく何もない。あるのは土地だけ。小屋に説明の女性がいて、声をかけてきた。発掘中なので何もお見せできませんけど。ここには、一般の住宅が建っていました。それを撤去して発掘が始まったんです。あちらの防波堤は当時の物です。うーん、とはいってもなあ、ここが世界遺産といわれても。
建物礎石ならどこでも
萩に本拠があった長州藩は幕府の要請を受けて、1856年、この場所に洋式大型船の造船所を建設。洋式軍艦「丙辰丸」(全長25m、排水量47t、スクーナー船)が、また万延元年1860には2隻目の洋式軍艦「庚申丸」(全長43m)が進水する。
説明板を見ると、ここにさまざまな建物が建っていたことが書かれている。おそらく礎石の跡があったのだろう。とはいえ、横浜などで人気になっているドックがあったわけでもなさそうだし、古い建物の礎石などどこででも見つかる。日本の近代造船の先駆けとはいっても、ここで作られた船は上記2隻だけで、作られた船が歴史に残っているわけでもない。
失望して帰る姿は見たくない
バーチャルリアリティーの画像を作ったといっても、それはネットで見られること。現地でただの空き地を見ていても、まったく何のイメージも湧かないのだ。
この造船所跡などが含まれる「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」は何だか中途半端なスポットが多い。おまけに松下村塾をそれに含めちゃうなんて、これもまたどこか無理があるのだ。
外国人観光客にとって、観光する場所を決めるとき、世界遺産というのはものすごく参考になる。だからといって、単なる空き地を世界遺産と位置づけてしまうのは、非常に違和感がある。わざわざ時間を割いて遠くからやってきた人が「失望」して帰って行く姿はだれも見たくない。
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