そんな中で時に珍妙な中継を聞く羽目になることがある。首都圏の試合でキー局がRCCのために制作した中継だ。5月4日、神宮球場のヤクルト-広島戦。ニッポン放送制作で、解説は石井一久氏、実況は山内宏明アナウンサーだった。この日、ニッポン放送はショウアップナイターとしてDeNAー巨人を中継しており、首都圏では通常のラジオでは広島のゲームを聞くことができなかった。
解説者とアナのやり取りギクシャク
とにかく、石井氏と山内アナウンサーのやり取りが珍妙だった。ピッチャーが1球投げるたびに山内アナは「今の球(の種類)は何ですか?」と質問。すると石井氏は「1球1球全部言わせる気ですか?」と反論する。今度は石井氏が「広島はゴロのアウトが多いけど、どれぐらいですかねえ」と質問。すると、山内アナは「私が全部数えるんですか?」と応じた。石井氏は「そうではなくて、ほかの人が数えたらいいでしょう」と当たり前の返事。2人のやり取りは終始、ギクシャクし、息が合っていないという雰囲気を醸し出していた。石井氏はさすがに広島の選手のことを取材していたが、山内アナはほとんど知らないようにも感じた。
誰も聞いていないなら
もしこれが、阪神戦で大阪の局、中日戦で名古屋の局、あるいは首都圏の巨人戦だったらどうか。中継はそのまま流され、いつもの視聴者が聞いているはず。上記のような珍妙なやり取りを聞けば、すぐにでも問い合わせが飛び込んでくるだろう。これが地元チームの話だったら、抗議殺到だろう。「ゴロアウトぐらいすぐに数えろよ」「アナウンサーは球種ぐらいおぼえろ」などだ。
おそらく石井、山内コンビもこれが首都圏で放送されているのなら違った対応をしていたような気がする。会社の人間も身近な人も聞いている可能性があるから。
でも、当日の放送は広島の地元局向けだ。誰かが聞いているわけではないとしたら、どうしても弛緩してまう。抗議が来たとしても、ニッポン放送ではなくRCC。抗議の中身なんて、それほど伝わっては来ないだろう。
中継するなら自社ものを
野球のラジオ中継の費用がどれぐらいかかるのかは知らない。また東京のキー局に制作依頼した場合、どれぐらい経費節減になるか分からない。しかし、広島の視聴者に聞かせるなら、変な放送をしないように番組中も目を光らせるなり、解説者、アナは自社で用意するべきではないのか。広島の皆さんは知らないだろうが、横浜球場のDeNA-広島戦をTV神奈川が中継する場合、当然ながら圧倒的なDeNAびいきの放送が行われる。
石井、山内コンビの中継は、広島寄りの放送を心がけていた感じもするが、それでもあんなにちぐはぐではNOだろう。セリーグ2連覇で全国的に人気上昇中のチームだけに、ラジオ放送のあり方も考えるべきだろう。
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